「共同経営はうまくいかない。やめたほうがいい」と、よく言われる。「絶対失敗する!」と言い切る人もいる。確かに我々の共同経営も崩れるべくして崩れた。しかし、やってみて思ったことは、共同経営だからダメだったとは思わない。実際に共同経営を続けている人たちもいる。問題なのは、ダメな共同経営のやり方をしてしまったということだ。なぜ失敗することが多いのか、そこをしっかり押さえ、話し合っておかなければいけなかった。話し合いが成立しないなら、もともと会社など成立するはずもなかった。会社を設立する時に「失敗するぞ」と警告してくれた人はいるが、本当に必要なアドバイスは「こうしないと失敗するぞ」ということだった。
共同経営は1年も経たずに破綻し、自営業として独立することになった。最初は同じ場所に同居し、別経営ながらも、外から見れば同じ会社の人という感じでやっていた。独立すると言っても、自宅に引っ込んでしまっては商売が成立するという自信はなかったし、会社に残ったほうも一人では事業が成り立たない。8ヶ月くらいは相互依存の形が続いた。
その間に自宅のアパートを引っ越し、仕事場が確保できるようになった。せっかく出資して会社を作ったのに導入することができなかったMacintosh。これをやっと買うことになった。普通にDTPをやるなら、Power MacとPSプリンターが必要だと言われていたが、予算がないのでPerformaとアルプスのマイクロドライプリンターでスタートすることになった。
1日の半分は自宅でMacやQuarkXPressの勉強をしたりして、もう半分は高円寺まで行って仕事をするという状態がしばらく続いた。交通費も節約しなければならず、雨の日以外は自転車で片道25分くらいかけて吉祥寺から高円寺まで通った。自転車の行動範囲はけっこう広く、東は新宿まで、西は田無や府中のほうまで行くこともあった。
しかし、そんな状態も長くは続かず、高円寺の家賃を負担しきれなくなって、完全に高円寺を撤退することになった。印刷機も断裁機も使えなくなり、パソコンもMacだけになった。得意先も親しかった1件を除いて、まったく持ってくることができず、外注先も新たに探していかなければならない。これからどんな仕事をしていけばいいのか、どんな仕事が可能なのか、まったく先の見えない状態になってしまった。計画的になったのではなく、成り行きでなってしまった自営業。社会の最後方を歩いているような気分だった。
しかし、どういう訳か時代はどんどん変わっていた。SOHOという言葉が生まれていた。スモールオフィス・ホームオフィスという意味らしい。もしかして、自分のやろうとしているのはSOHOみたいなものなのか? 取り残されて最後方を歩いているつもりだったのが、いつの間にか前のほうを歩いていたということか?
とにかく進むしかなかった。その頃、杉並区の起業家セミナーに参加した時に知り合った仲間もいたし、いろいろ教えてくれる自営業の仲間もいた。知り合いを通じてお客さんも少しずつ増えていき、新しい外注先も開拓していろいろな仕事がこなせるようになっていった。
今、パソコンはどんどん進化し、ソフトは頻繁にバージョンアップされていく。いろいろやろうとすると、とても追いつかないスピードだ。いつまでも同じところにしがみついていると、すぐに取り残されてしまう。これから何を選び、どんな仕事をしていくか、安定した基盤の存在しない、誰にとっても大変な時代なのだと思う。